〈性〉を題材としたおすすめの映画や海外ドラマ

〈性〉を題材とした映画&海外ドラマ アイキャッチ画像

こんにちは。植物療法士、フェムケアセラピストの宮窪るなです。

2023年10月、カリフォルニア大学ロサンゼルス校が「Teens & Screens」と題した報告書を発表しました。

レポートによると、Z世代(調査対象は10歳から24歳の1,500人)の半数近くが「TVドラマや映画の筋書きにセックス描写は必要ない」と答えたそうです

この結果を聞いて、みなさんはどう思いますか?

私は10代の頃、セックスの方法はさておき、セックスに至るまでのプロセスや恋人とのロマンスは、恋愛映画やドラマを通して学んできました。とくに〈性〉は、日常のなかで隠されがちなテーマだからこそ、映像作品(もちろん健全な)でしか色事を知るすべがなかったのです。

確かに、家族が隣にいるときにテレビからそういったシーンが流れる事態ほど気まずいことはありません。しかし、セックスや性を描いた作品は、ただリビングでの居心地を悪くさせるだけのものでしょうか?

私はこれらの作品には、ポジティブな共通点があると考えています。

そこで今回は、個人的におすすめの〈性〉を題材とした映画や海外ドラマを紹介します!コラムの最後には、作品の配信・レンタル状況などもまとめてありますので、参考にしてくださいね。

セックス・エデュケーション

〈性〉を題材とした映画や海外ドラマを紹介するなら、『セックス・エデュケーション』は絶対に外すことができない王道作品です。 

本作は2019年、Netflixにて配信が開始されたと同時に、絶大な人気を博したイギリス発の“性教育”学園ドラマ。2023年秋にファイナルシーズンを迎えたばかりで、10代の妊娠からリベンジポルノ、LGBTQ+、性感染症まで…世に溢れる性のテーマに、とことん向き合った話題作でもあります

主人公は、恋や性事情に奥手な少年オーティス。彼は、沸き起こる罪悪感にさいなまれてしまい、自慰行為がうまくできない悩みを抱えていました。

そんな繊細な性格とはうらはらに、オーティスが身につけている性の知識は大人顔負け!なぜなら彼は、セックス・セラピストとして働く母のもとで育ち、幼少期から他の子よりもアダルティーな環境で暮らしてきたから。

同じ高校に通うメイヴは、彼の素質に目をつけ、一緒に校内生徒に向けた“セックス・セラピー”をしないかと話を持ちかけます…。

第1話の冒頭からわざとらしいセックスシーンがあるため、もしかすると、そっと画面を閉じたくなる方もいるかもしれません。しかし、『セックス・エデュケーション』は単なる学園ドラマでも、性教育ドラマでもないのです

『セックス・エデュケーション』イメージ画像
©︎ Sex Education

“人生は、失敗や苦悩の連続。愛は必ずしも実るものでもないし、時として大きな傷として返ってくるかもしれない。それはとてつもなく、つらく悲しい。でもそれが、生きるということなんだ。”

本作は、視聴者へ性の知識を与えてくれるだけではなく、生きるうえで大事なことを気づかせてくれます

主人公はあくまでもオーティスですが、作品に登場する全てのキャラクターに、それぞれの物語があるのも見どころのひとつ。主人公を超越した人物を1人あげるとするならば、メイヴの親友、エイミーでしょう。彼女にはたくさん泣かされました。

ここで詳しくは述べませんが、セックス中に感じているフリをするのが当たり前だったエイミーは、ある事件をきっかけに、世間に屈さない強い意思を持った1人の女性として成長していきます。彼女のストーリーラインを抜きにして本作を語ることはできません。

皆さんもぜひ、推しキャラを探しながら、性について楽しく学んでみてはいかがでしょうか?

春の画  SHUNGA

皆さんは、春画にどんなイメージを持っていますか?

男女の交わりを露骨に描いた、江戸時代版ポルノグラフィティ?それとも、取るに足らない俗画?

そんな風に春画をひと言で片付けがちですが、私たち現代人はそもそも春画について何か知ってたっけ…。

『春の画 SHUNGA』は、映倫の区分指定(R+18)を受けた映画として、劇場で公開される初の“春画ドキュメンタリー”です。それはまさしく〈技〉の結晶!日本人なら知っておくべき文化と芸術が、濃厚に語られています。

本作が公開されたのは、2023年11月下旬。私も劇場に足をはこび、葛飾北斎、喜多川歌麿など、第一線で活躍した浮世絵師たちが織りなす100点以上の春画をスクリーンで味わいました。

それもすべて無修正のまま!

春画はかつて、“笑い絵”とも呼ばれていたのをご存知でしょうか?なぜなら春画は、好色な男性に向けて作られたものではなく、世代や性別、身分までも超えて、皆で和気あいあいと鑑賞し、楽しむものだったからです

実際に訪れた春画展の様子
映画公開を記念して開催された〈春画展〉も堪能しました

男女の交わりは、新たな命を宿すことに繋がる“おめでたい”行為。〈性〉は〈生〉を導くものという意味合いから、春画は嫁入り道具や性の指南書として持たされたのだとか。「実家の蔵からおばあちゃんの春画が出てきた!」なんてことも現実に起こりうる話なのです。

また本作では、アニメーション化された春画を通して、より官能的にその世界観を感じることもできます。とくに北斎の『蛸と海女』は必見!その艶めかしさは、一度体験したら忘れられないほどの破壊力。思わず劇場で息を呑んでしまいました。

「女性だって快楽を求めてもいいのよ!」

まるで、描かれた女性たちが、声を大にして私たちに教えてくれているよう。春画のなかでは、男も女も対等に性を心から楽しんでいるのです

ヒステリア

舞台は19世紀のイギリス ー それは、性への抑圧が特に厳しかったとされているヴィクトリア王朝が隆盛をほこっていた時代。電化製品がめざましい発展をとげ、医療も革命のときを迎えていました。

映画『ヒステリア』は、バイブレーター誕生の実話をもとにして制作されたラブコメディです。いま世に溢れているプレジャーアイテムの原点が、もともと医療用器具だったという話は前回のコラムでもお伝えした通り。

若き医師グランビルは、最新の医療を追い求めようとしない上司のもとで働く環境に嫌気がさし、自分の情熱にみあう職場を探す日々を送っていました。

やっとの思いでたどり着いたのが、医師ダリンプルの診療所。そこは、子宮の過活動がもとで起こる女性特有の“病気”、ヒステリーの治療を専門としており、待合室には、貴婦人たちがずらり…。

ダリンプルは、患者が訴えるイライラや悲壮感、夫にたいする強迫観念をしずめるため、医師の手によって“外陰マッサージ”をほどこすといった斬新な治療をおこなっていました。

ヒステリーの特効薬はズバリ…オルガズムを得ることだったのです

グランビルはダリンプルのサポートを始めますが、女性たちをオルガズムへ導くためにかけていた時間はひとり当たり約45分。連日の治療のせいで、彼の指はとうとう限界をむかえてしまいます。

そんな時、グランビルは友人が使っていた“電動羽根はたき”にふと目がとまり…。

バイブレーターはどう誕生したのか?そして、バイブレーター治療による女性たちの反応やいかに!?

『ヒステリア』イメージ画像
©︎ Hysteria

医師たちの奮闘ぶりはさることながら、勝気な女性キャラたちからも目が離せないのが『ヒステリア』の魅力です。女性が社会に進出するのは極めて困難で、参政権すらなかった時代背景がストーリーに深みを与えています。

「バイブレーター誕生の物語」だけにとどまらず「女性が誰かのためではなく、自分の人生を生きる」という強いメッセージを感じる本作は、まさに社会派ラブコメの真骨頂!

上に載せた画像は、私が思わず吹き出してしまった一番お気に入りのシーンです。また、肌の露出も少なく、エンドロールまでしっかり楽しめます。

31年目の夫婦げんか

セックスレス大国、日本。【ジェックス】ジャパン・セックスサーべイ2020の調査によると、婚姻関係におけるセックスレス化は年々増加の一途をたどっており、実に5割以上のカップルがこの状態(※1)であると明かされました。

映画『31年目の夫婦げんか』は、セックスレスに焦点をあてた作品です。舞台はアメリカですが、結婚31年目を迎えた夫婦が“心理的再婚”に向けて奔走する様子がラブコメディとして描かれています

ケイは、夫アーノルドを献身的に支える良妻。立派な一軒家に暮らし、子供たちも順調に巣立ち、結婚。なに不自由ない日々を送っていましたが、彼女の心はいつもどこか満たされません。なぜなら、同じ屋根の下、一緒に暮らしている夫と軽いキスはするものの、いつの間にか体も心も離れ、孤独を感じるようになっていたからです。

「人生を変えたい!」そう強く願ったケイは、『思いどおりの結婚生活』の著者、フェルド医師のカップルセラピーをなかば強引に予約。そこは、「結婚はもう終わった」と嘆く多くの夫婦が、生まれ変わるような変化をとげるとウワサされている有名相談所でした。

凄腕カウンセラーから日々出される“課題”を、2人は乗り越えることができるのか?心の絆を取り戻すための夫婦の奮闘ぶりが、とびきりチャーミングに表現された一本です。

『31年目の夫婦げんか』イメージ画像
©︎ Hope Springs

愛する人の肌に触れる感覚を忘れた大人たちが、セラピー中に思わず出してしまう色とりどりな表情は、観ていて飽きることはありません

『プラダを着た悪魔』で鬼編集長を演じたメリル・ストリープと、日本の某CMにて宇宙人を演じているトミー・リー・ジョーンズ、実力派俳優の2人が夫婦役を熱演しています。

露骨なセックスシーンがなく安心して観れますし、中高年だけではなく、いつかこの世代へと向かっていく全てのカップルにもおすすめです。映画を観たあと「大好きな人と抱き合いたい!」と思わせてくれるハートフルな作品となっています。

フリーバッグ

『フリーバッグ』シーズン1キービジュアル
©︎ FLEABAG

最後に紹介するのは、Amazonオリジナル作品、ドラマ『フリーバッグ』です。

これまで紹介した4作品と雰囲気はもちろん、メッセージ性のベクトルが圧倒的に異色の作品です。〈性〉を題材としている、というよりはむしろ、女性が〈女〉という〈性〉をたずさえ、この息苦しい世の中をどう強く生き抜いていくかを、ブラックユーモアたっぷりに描いています

主人公は、ロンドンに住む30代前半の女性。口は悪く皮肉屋で、あまのじゃくな性格なうえに、とにかく男グセが悪い。いつも虚勢を張りながら、破天荒なことばかり起こす彼女に、嫌悪感すらいだく視聴者もいるでしょう。

私も当初、彼女の行動心理がつかめずにいたのですが、ストーリーが進むにつれ、彼女の中に、どこか張り詰めたものを感じ始めたのです。

もしかしたら、彼女は深く傷ついているのではないか?自分の存在を認めたくて(あるいは壊したくて)、異性と体だけの乱暴な関係を続けているのではないか…?

彼女の名前は〈Fleabag(ノミ女)〉。もちろんこれはあだ名ですが、劇中でも、家族や周りの人たちからは常に「You」「She」などと呼ばれ、最後まで、彼女の名前が明かされることはありません。

名前を持たないキャラだからこそ、視聴者は客観視を忘れ、彼女の生き様を、どこか自分の人生と重ねて観てしまうのです。これは、本作で脚本・プロデュース・主演を全てこなしたエンタメ界の新星、フィービー・ウォーラー=ブリッジによるトリッキーな仕掛け。

2019年エミー賞の様子
2019年のエミー賞コメディシリーズにて6部門を受賞し
名実ともに世界から認められた

性をタブー視する文化からか、日本ではそこまで広く浸透していませんが、イギリスでは社会現象となるほどの話題作で、“Fleabagging”(自分に不適切な相手とデートを繰り返してしまう行動)という造語まで生まれたそう!

現代を生きる女性なら誰しも、“ノミ女”になりうる危うさを持っているゆえに、いつも強がっている彼女が時折みせる素の表情に、心を打たれない女性はいないはず。

本作の中での一番のお気に入りは、主人公が、更年期を迎えた女性から人生のアドバイスをされるシーン。

「女は生まれつき痛みとともにある。それが女の体の宿命。一生、痛みとの付き合いが続くのよ。だから、パーティーに戻って火遊びしてきなさい。」

ドラマ『フリーバッグ』は今を生きる女性に贈る、女性讃歌の物語なのです。

さいごに

いかがでしたか?観たいと思える作品は見つかったでしょうか。

冒頭に紹介したカリフォルニア大学のレポートと相反するかたちで、今回あえてこのテーマを選んだのは、〈性〉を題材とした作品には、共通点があると考えているからです

それは春画の歴史、そして映画やドラマに出てくるキャラクターたちが、いつも全身全霊で私たちに教えてくれています。

〈性〉に向き合うことは〈生〉と向き合うこと。

彼らは皆、性に対して真正面からぶつかりながら、自分らしく生きるためのヒントを懸命に見つけようとしているのです。逆にいうと、生きることを考えるうえで、性は無視できないテーマだと言えます

もちろん映像作品はフィクション。決して私たちの人生の「How to」 にはならないことを十分に理解したうえでも、キャラクターたちの生き方から学び、感じ取れるものは少なくないでしょう。

また、今回紹介した作品は〈性〉を題材とした映画や海外ドラマのほんの一部です。その他のおすすめ作品も、いつか改めて紹介したいと思います。

来たるホリデーシーズン、ぜひ色々な作品に触れてみてくださいね。

〈性〉を題材としたおすすめ映画&ドラマ一覧

※1 日本性科学会によると、セックスレスとは、特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合

参考 一般社団法人日本家族計画協会家族計画研究センター (2020) 「調査結果報告書(PDF)」【ジェックス】ジャパン・セックスサーベイ2020 https://www.jfpa.or.jp/pdf/sexservey2020/report.pdf  (参照 2023-12-10)  / セックス・エデュケーション / 春の画 SHUNGA / ヒステリア / 31年目の夫婦げんか / フリーバッグ
 

著者プロフィール

宮窪るな

宮窪るな(みやくぼ るな)
植物療法士/フェムケアセラピスト

離婚をきっかけに体調を崩し、月経前不快気分障害(PMDD)や月経困難症に悩まされるようになる。できるだけ自然のちからで心身に向き合いたいという信念から、植物療法専門校「ルボアフィトテラピースクール」の門をたたき、AMPP(仏植物療法普及医学協会)の認定資格を取得。学びの中で、恩師である森田敦子先生が啓蒙活動を続ける〈性科学(セクソロジー)〉にも大きく心を動かされ、タイ・チェンマイ発祥のトリートメントである〈カルサイネイザン〉を学ぶ。現在、フェムケアサロンの活動とともに、SNSで植物療法や性の本質を発信している。
Instagram:@phyto_note_luna

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