#02 子どもと飛び込む性の世界

最終更新 2024.06.30 by WOMB LABO編集部

こんにちは、植物療法士の柏木春香です。

前回のコラムVol.1「今こそ正しい性教育のとき」では私たちを取り巻く性のいま、セクシュアリティがなぜ大切なのかについてお話をしました。そして今回は、具体的にどう性教育を進めていくのかについてお話をしていきます。

子どもの下ネタこそ最高のきっかけ

純粋無垢な子どもたちの性への興味関心は、ごく幼いころから自然に出てくるものです。特に3歳頃から、わかりやすくその興味が見えてくるのではないでしょうか?うんちと連呼し始めたり、おちんちん!おしり!といってはニコニコと嬉しそうにしてみたり。小学生になる頃には漫画の入浴シーンが気になったり、アニメに出てくるお色気キャラが気になってみたり・・我が家の子どもたちも下ネタ街道まっしぐら、今も下ネタ満載のオリジナルソングを楽しそうに歌う日々です。コラムを読んでくださっている方の中にも、お子さんの場所を選ばない下ネタに困っている方もいらっしゃるかもしれませんね。

子どもたちは教えたわけでもないのにどこからか下ネタを仕入れてきて、その上とっても楽しそう。ある時は、我が子の口から「セックスってなに?」なんて飛び出したり。そしてしばしば見られる自分の性器を触る行為。理由は様々ですが、何となく気になって触った、落ち着くから、気持ちが良いから触るといった理由が多いようです。ごく幼い子供たちのそんな様子を見ていると、まるで「性への興味=自然なこと」だと教えてくれている様ではありませんか?

子どもたちは自分の体に興味を持ち、異性との違いに気づき・・性への興味関心はあっという間に膨らんでいきます。大人の動揺なんてどこ吹く風、大人が口にしづらい性の話を、幼い子どもは何の遠慮もなく口にするものです。しかしそんな時こそ親子で性について話をする絶好のチャンスです。我が子から性への興味を感じたら、さあ、話をしてみましょう。

子どもたちの性を守る

では、我が子が自分の性器を触っていたとして、何と声をかける?何してるのと聞いてみる?どうかしたのと尋ねてみる?びっくりして咄嗟に止めてしまう?

ここで一つ、心に留めておいてほしい大切なことがあります。子どもの性への興味関心を目の当たりにしても、決して怒ったり否定したりせず子どもたちの行動を一度受け止めてほしいのです。子どもたちの性への興味関心は自然と湧き上がってくるもの。それを大人が否定せず、受け入れられる経験をすることで、その後の人生における「豊かな性との関わり」が始まっていくと考えています。

なんと言っても性の話はとてもデリケート。そして生きている以上、生涯関わり続けるもの。だからこそ、性の話を伝えていく立場である大人が、子どもにとっての安心できる場所になり、子どもと性についてきちんと話せるようになりましょう!

仮に「ダメ!」なんて叱りつけてしまったら、子どもの柔らかな心は大きなダメージを受け「悪いことをしちゃったんだ」とインプットされてしまいます。そうなると性に関するあらゆることを心の奥底に仕舞い込んでしまい、困りごとがあるときでも自分の中で解決するしかなくなってしまいますよね。驚いたり焦ったりしたとしても絶対に否定しない。そして怒らない。言葉が出てこない場合は一度深く呼吸をしましょう。

そしてもう一つ大切なこと。子どもの性を守りましょう。子どもは純粋無垢です。だからこそ何の意図もなく公共の場で自分の性器を触ろうとしてしまったり、スカートが捲れても気にしなかったり。そんな純粋無垢な「子どもの性」を悪く使おうとする大人がいることも、悲しいかな現実です。

あなたのノーには価値がある

ここで少し世界へ目を向けてみましょう。子どもの性的搾取は世界で最も急増している暴力の一つであり、性的暴力を受けている子どもたちは7500万人近いとみられています(地図とデータで見る性の世界ハンドブック,2018)。子どもたちの受ける性的搾取には売春、闇取引、買春ツアー、ポルノグラフィーが含まれており、これらは世界的にみて大きな問題となっています。では身近で起こりうる性的暴力はどうでしょう?悲しいことですが、それらはプライベートな領域で、しかも近親者(親、親戚、教師など身近な大人)によって行われるといいます。近親者による性暴力は、子どもたちを困惑させ、恥ずかしさや怖さから誰にも言えず終わってしまうことも多く、心の闇を作ってしまいやすいです。

いつ何時我が子が性被害に巻き込まれるかわからないと考えると、性について日常的に話をし、親子で正しい知識をつけ、自分の体と体の守り方を知っておくことは非常に重要。困ったことがあった時に、すぐに相談できる親子関係を築くことも、大切なのです。

少し話が逸れましたが、性器を触る行為や人前でして困ることについては、プライベートなことであること、お外や人のいる前では決してしないことなど、早めに伝えてあげるのがベター。我が家では「自分だけの大切な場所だから、お外や人のいるところではしないで、一人きりの時にしようね」と伝えています。しかし、話しづらい、どう話していいかわからないという方には絵本を使った性教育がおすすめ。

マティルド・ボディ作の「女の子のからだえほん」と「男の子のからだえほん」はセクシュアリティにまつわる大切なことがギュギュッとつまっていて、性の大切さを伝えるのにとてもおすすめの一冊です。

女の子のからだえほん

男の子のからだえほん

体や性器の構造、生まれ持った性とジェンダー、性的同意など、性にまつわる基本のきがわかりやすく、包み隠すことなく書かれています。お子さんと一緒に読むことで、大人にとっても学びの多い一冊でしょう。我が家にもこの二冊がありますが、大人がギョッとしてしまうようなことでも、子どもたちは平然と読んでいます。こうやって性の話がごく当たり前という環境を作ることが、私たち大人にできることのひとつなのではないでしょうか。

そして、こちらの本でも触れられていますが、「自分の体も心も自分だけのもの」ということに改めて気付かされることでしょう。子ども同士の場合、悪気なく性についてのマナー違反を犯してしまうことが多々あります。スカートを捲る、性器を見せてと強要する、同意なくキスをするなどのことです。我が子もお友達との間でそういった出来事が実際にありました。子どもにとってはどれもが初めての経験であり、どう対応すべきかわからないのは当たり前。だからこそ大人がきちんと話をして伝えてあげることが必要なのです。

話し方がわからない、恥ずかしいからと蓋をするのではなく、何が良くて何がダメなのかをきちんと伝える。自分の心が嫌だと感じることは嫌だと言っていいと言うこと、つまり「あなたのノーには価値がある」ということは、生涯自分自身を守り大切にする上で重要なヒントになるでしょう。

もう一冊、生理や射精について、セックスってなに?といった疑問に答えてくれるこちらの絵本もおすすめ。

Amazon.co.jp: 性の絵本 みんながもってるたからものってなーんだ?

 

可愛らしいイラストとシンプルな文章、小さなお子さんでもとっつきやすく、幼稚園のお子さんにもおすすめの一冊です。絵本の中では、生き物の交尾と並んで人間のセックスが描かれています。誤った性イメージを抱く前に、生き物として当たり前の営みであることを教えてもらえます。

 

今回は子どもと性について話をするきっかけ探しや、実際にどのように話をするのかということについてお話をしてきました。

子どもと性について話すきっかけは日常の様々なところに隠れています。あとは突如訪れるその時に備えて、大人自身が学び、考え、心構えをしておくことが必要です。まずは大人が「性」から目を逸らさず、向き合い、学んでいきましょう。絵本やウェブサイトなど、気軽に性について学べるものを利用して、少しずつ性に関して知ってみてくださいね。次回は様々な性についてお話をしていきます。

 

参考図書:地図とデータで見る性の世界ハンドブック 2018 

地図とデータで見る性の世界ハンドブック

おすすめウェブサイト:PILCONという性の知識と人権尊重に基づく情報発信を行なっているNPO法人の情報サイト。大人自身が正しく性のことを学び直し、それから子どもの性に向き合いたいという方におすすめ。日本の性にまつわる社会の課題に取り組むべく、基本的な知識から、性の諸問題、セルフプレジャーなど幅広く情報を得ることができます。これってどういうことなんだろう?どう伝えたらいいんだろう?という時に、とても役に立ってくれます。ピルコン

 

著者プロフィール

柏木春香(かしわぎはるか)

AMPP(フランス植物療法普及医学協会)認定メディカルフィトテラピスト

福岡生まれ。産後の不調を機に漢方やハーブの素晴らしさを知り、植物療法の世界に入る。現在は植物療法コンサルテーションやハーブのブレンドを行うかたわら、SNSを通じて植物療法のこと、健康やセクシュアリティの大切さを伝えている。instagram:mul.phyto

 

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