話そう、セックスレス。

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こんにちは。植物療法士、フェムケアセラピストの宮窪るなです。

2024年2月、とあるネット記事が世間をにぎわせました。見出しには『夫婦6割がセックスレス』と書かれています。

この記事が取り上げているのは、総合医療品メーカー「ジェクス」の依頼を受け「日本家族計画協会」が隔年で実施している性の実態調査。アンケートにより、日本の64.2%の夫婦がセックスレスの状態であることが明らかになったというのです。これは2020年に行われた同調査の結果、51.9%を大きく上回る数字となりました。

“セックスレス”

この言葉を聞くと、心がざわついたり胸が苦しくなったりする方も多いのではないでしょうか。私もそのひとりです。実を言えば、過去のパートナーとは約10年ほど、セックスレスの状態にありました。

「このままセックスせずに、私の一生は終わるんだろうか…?」

恐怖と虚しさを胸に、涙で枕を濡らしながら眠った日々を、今でも鮮明に覚えています。

昨年には、セックスレスを描いた漫画がドラマ化され、大きな話題にもなりましたよね。これは、日本人がいかにこの分野に関心を寄せているかの表れなのではないでしょうか。

そして実際に、セックスレスの状態にある夫婦は6割以上…。これが今の日本のリアルです。私は経験者としても、フェムケアセラピストとしても、セックスレスは決して見過ごせない大切なテーマだと考えています。

さあ、セックスレスについて今よりも真剣に向き合ってみませんか?今回は、私個人の体験もまじえながらお話ししていきます。どうぞ、最後までお付き合いください。

セックスレスをどう定義する?

セックスレスをどう定義する?

そもそもセックスレスとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

日本性科学会によると『特殊な事情が認められないにも拘わらずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期に亘ることが予想される場合』と定義されています。

「1ヶ月セックスしていないなんて、割とあるあるかも…」

と不安になられた方もいるかと思いますが、この定義はあくまでもひとつの基準。そこにとらわれ過ぎる必要はありませんので、ご安心くださいね。

実際にセックスレスで悩んでいるカップルのお話や自身の経験から言えるのは、セックスレスには数字だけでは表せない複雑さがあるということです。

冒頭の6割という数字も、「セックスレスである」と自覚している夫婦ではなく、「1ヶ月以上、夫婦間で性交渉がない」と答えた夫婦の割合を指しています。また別の記事では、「いわゆるセックスレスの状態にあるけれども仲はいいと感じている」と答えた夫婦の割合は過半数超え。

つまりセックスレスとは、人それぞれの主観によって、定義に幅のあるものなのです

セックスレスが絶対に良くないとも言い切れないですし、1ヶ月に何度か性交渉をしていても夫婦やカップルのどちらか一方が回数に不満を感じているなら、向き合うべき課題があると私は考えます。

なぜセックスレスになるの?

性欲は3大欲求のひとつとされていますが、なぜ私たちはセックスから遠ざかってしまうのでしょうか。

セックスレスとひとくちに言っても、その理由や原因、シチュエーションはさまざまあります。ここでは考えられるものをいくつかあげてみました。

男女で違うセックスの目的

冒頭で取りあげた「日本家族計画協会」による2020年版の調査では、男女の間でセックスの目的が異なる、つまりセックスしたい理由に食い違いがあることがわかりました。

結果は、男性で「性的な快楽のため」が69.8%、女性で「愛情を表現するため」の56.1%がトップとなり、どこか相反しているイメージがあります。

セックスは相手がいてこそ成立するものであるがゆえに、パートナー同士で起こるこのような小さなズレは、やがて大きな亀裂となる可能性をはらんでいるでしょう。

男女で違うセックスの目的グラフ(ジェクス)
JEX SEX SURVEY 2020 調査結果報告書

睡眠の文化

欧米では、幼少期のうちから子供を自分の部屋にひとりで寝かせる家庭がほとんどですが、日本では、家族がひとつの部屋で川の字になって寝る文化があります。

セックスをどう定義するのかにもよりますが、産後は夫婦2人の時間が減ってしまうので、セックスの回数もそれに比例し減っていくのが自然でしょう。

性に対する世間のイメージ

日本では、性は卑猥なもの、隠すべきものなどのイメージが根強くあります。どんなに深刻な悩みでも、誰かへ相談するには抵抗を感じたり、性的にパートナーを求める自分にこそ問題があると思い込んでしまったりと、どこか消極的である方も少なくありません。

セックスの願望や性欲、セックスレスを問題にすること自体がとなり、それらは耐えるべきもの、スルーするもの、と現実逃避していくスタンスになってしまいます。

産後の変化

セックスレスになった理由として「産後なんとなく」はよく耳にする言葉です。

妻側は、産後のホルモンバランスの変化によるものだけではなく、育児に集中していてそれどころではない場合や、「いつも家事育児を手伝ってくれないのに夜だけ求められるのは腹が立つ」などの不満があるようです。

一方の夫側は、妊娠出産をした妻の姿を見て、その神秘的な様子から妻を性の対象として見れなくなる場合や、身内(家族)というイメージから、妻とセックスを結びつけてはいけない恐怖心のようなものを抱く方もいます。

痛みの限界

セックスで痛みを感じている女性は2人に1人。

これはコラムvol.2でも詳しくお伝えしました。とくに痛みがセックスレスにつながっていくのは、産後や更年期をすぎた女性に多くみられます。

「痛みに耐えてまでするものではない」と思うのか「痛みを申告するくらいなら耐える方がマシ」と思うのかはその方によりますが、いずれにせよセックスで起こる痛みの存在が、セックスレスのトリガーになるのは間違いありません。

セックスレスは2人で共有

以上のように、セックスレスは性差やホルモンの影響によるものだけにとどまらず、社会的な要因や文化的背景などが複雑に絡み合っています。そこで当人たちに生じる苦悩や、やり場のない感情は、ひとくくりに言い表せるものでもありません。

個人はもちろん、カップルや夫婦はそれぞれに違った歴史を持っているからこそ、それをひとつずつ丁寧にひもとき、セックスレスという課題に向き合いたいものです

そうならないための心がけ

さまざまな角度から理由や原因を探りましたが、どうやらセックスレスは、その状態になってから解決・解消するよりも、お付き合いや結婚、妊娠・出産をする前に、パートナーとセックスに関する認識をすり合わせておくことがカギと言えそうです。

「セックスはコミュニケーションである」とはよく言われますが、私はカラダの関係を深めるより前に、パートナーとの言葉によるコミュニケーション(対話)が重要だと感じています。

少し照れくささがあるかもしれませんが「自分にとってセックスはこういう感じなんだけど、あなたはどう思っているの?」など、素直に話してみるのもひとつの手です。すぐに答えは返ってこなくても、勇気を持って聞いてみることに価値があるのではないでしょうか。

逆に「言わなくても何となくわかってくれるだろう」は絵に描いた餅。性やセックスは、クローズドなテーマであり、理想もフェイクも蔓延しているからこそ、「言わないと伝わらない」のです。

また大前提として、パートナーへの伝え方や話すタイミングには気をつける必要があるでしょう。

土足で踏み込むような言いかたをすれば、相手は心の扉を閉ざしてしまうでしょうし、ストレートに言われる方がむしろ伝わりやすい場合もあります。

性の話って、ほんとうにほんっとうに難しく、そしてとってもデリケートですよね…!

セックスレスについて対話かするカップル

当然、すでにセックスレスの状態である場合にも、やはり対話は欠かせません。

私がかつてセックスを拒まれたときに感じていたのは、どこか欠けている自分なにかが埋まらない淋しさ隣にパートナーがいても感じる孤独などでした。

反対にセックスを拒む側にも、もちろん苦悩はあります。相手を受け入れられない罪悪感自信の喪失触れられたくないところに触れられる怖さ…。

対話がなければもちろん、どちらかひとりの鬱憤を晴らすような一方通行の会話では、これらの感情はすべて見落とされてしまいます。

お互いが、相手の話をゆっくりとまず聴く姿勢が大切

必ずしもセックスレスの解消につながるとは限りませんが、気持ちを聴きくらべてみることで、新しい選択肢や思ってもなかった発見があるはずです。

忘れずに心に留めておきたいのは、性欲の“あるなし”は“良し悪し”ではない点。性欲はヘルシーな欲求であり、健康のバロメーターにもなりますが、もともと少ない、あるいは全くない方がいるのもごく自然なことです。

食欲で例えると、たくさん食べるのが好きなグルメの方もいる一方で、食の細い方や粗食で十分と考える方などさまざまですよね。他人や世間の常識とくらべるのではなく、自分のこれまでの性欲を基準に、その変化を感じてみましょう。

セックスレスで自分を知る

セックスレスで悩んだ過去

ここから先は、私の実体験をもとに感じたままをお話ししていきます。

セックスレスで悩んでいたころ、それはまさに先の見えない霧のなかにいるような気分で、いつもなにかに傷ついている自分がいました。当時の気持ちは数年たった今でも、シクシクと疼く古傷のように感じられます。

勇気を出して誘っても、拒まれ続けて心はボロボロ…。今夜こそは!と期待した矢先に隣から聞こえてくるパートナーの寝息…。気を引こうとセクシーな下着を身につけても見向きもされない自分はまるで、透明人間でした。

状況を打破しようと想いを伝えてもうまくいかず、頭のなかには悶々とネガティブな考えが渦巻きはじめます。

「女の私からセックスを求めてしまうのは相手に申し訳ない」
「十分幸せなのに、さらにセックスで快感を得たい私がおかしい」
「私が求められないのは、女としての魅力が欠けているから」
「周りからは、たかがセックスと鼻で笑われるだろう」

こんな状況が10年ほど続いたある日、ふと、自分の心が“相手のため”“世間の目”ばかりに執着していると気づいた私は、それらをすべて取っ払って、“自分はどうしたいか”に軸を置きなおしてみることにしたのです。

そこで湧いてきた気持ちは…

「セックスは、私にとって欠かすことのできない愛情表現のひとつ。私はセックスで心と体に触れ合える人と一緒にいたい。」

手に取るようにハッキリと自分の気持ちを感じられたとき、おのずと選択肢はしぼられてゆき、結局そのお相手とは話し合いのすえ、お別れすることとなりました。

セックスレスの先にある未来

ここに記した私の過去の経験は、たったひとつの事例でしかありません。

繰り返しになりますが、個人はもちろん、カップルや夫婦はそれぞれに違った歴史を持っているからこそ、正解なんて、はじめからあってないようなもの。私の場合は「別れ」を選択しましたが、じっくりと時間をかけて夫婦で向き合ったのちに、最後は良好な関係を取りもどすカップルもいるでしょう。

その上で大切になってくるのは、自分のなかにあるセックスに対する価値観やパートナーとのあり方に、まずは意識を向けてみること

これは性愛をはぐくむ相手との関係を見つめ直したり、今後誰かとリレーションシップを求めるときにも必要になってくるアクションだと確信しています。

さいごに

今回は、セックスレスについてお話ししました。

ときにはお酒の席でのアテになってしまうような話題ですが、内情はとてもセンシティブなテーマであると感じ取っていただけたかと思います。

自分ひとりの問題ではないからこそある、複雑さ。どちらか一方の意見を押し通すことはできないという前提に立ったときに辿りつくのは、自分にとってベストな答えではなく、お互いにとってベターな選択です

さて、あなたのなかには、どんな気持ちがありますか?

「セックスは快感を得るためのもの」
「セックスは暮らしのなかの、自然な営み」
「セックスすることに罪悪感がある」
「この人とのセックスがキライだ」
「セックスの話なんかしたくない」
「セックスは子作りのための、ただの作業」
「セックスで、なにかを補おうとしている」
「セックスよりも、この人のそばにいるほうが大事」

これらの気持ちには、正解も不正解も、良し悪しもないと思うのです。大切なのは、そこに意識を向けた先に「自分はどうしたいか、なぜそう思うのか」を感じてみること。

夫婦やカップルの間でセックスの話題を避けているのも、もしかするとなにか理由があるのかもしれません。

その本質に気づけたとき、対話が始まるのではないでしょうか?


著者プロフィール

宮窪るな

宮窪るな(みやくぼ るな)
植物療法士/フェムケアセラピスト

離婚をきっかけに体調を崩し、月経前不快気分障害(PMDD)や月経困難症に悩まされるようになる。できるだけ自然のちからで心身に向き合いたいという信念から、植物療法専門校「ルボアフィトテラピースクール」の門をたたき、AMPP(仏植物療法普及医学協会)の認定資格を取得。学びの中で、恩師である森田敦子先生が啓蒙活動を続ける〈性科学(セクソロジー)〉にも大きく心を動かされ、タイ・チェンマイ発祥のトリートメントである〈カルサイネイザン〉を学ぶ。現在、フェムケアサロンの活動とともに、SNSで植物療法や性の本質を発信している。
Instagram:@phyto_note_luna

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