更年期向けのホルモン補充療法とは?費用や効果、副作用、やめどきについてご紹介します

最終更新 2021.09.16 by WOMB LABO編集部

こんにちは。WOMBLABO編集部です。更年期障害に悩む女性のための「ホルモン補充療法(HRT)」について、費用や効果、副作用、やめどきなどをご紹介します。

更年期障害の治療について

更年期は、閉経をはさんだ約10年間(45~55歳頃)のことです。更年期の女性は、頭痛や肩こり、ホットフラッシュ、イライラなど様々な症状が起きることがあります。 なかでも、日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談し早めに治療を開始しましょう。治療法には、ホルモン補充療法や漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬、カウンセリングや運動・食事療法などがあります。今回は、ホルモン補充療法についてご紹介していきます。

ホルモン補充療法について

急激にホルモン量が変化することで、身体がその変化に十分についていけなくなると、自律神経に乱れが生じ、様々な症状が現れることがあります。ホルモン補充療法(HRT)は、この急激な変化に対して、必要最低限のホルモンを補充してあげることで、減少幅を緩やかにし、徐々に身体に適応させていく治療法です。

ホルモン補充療法の費用について

株式会社QLifeの調査では、ホルモン補充療法で1カ月にかかる平均費用として回答数が一番多かったのが「2000円未満」でした。 ホルモン補充療法は、保険適用で自己負担も少なく手軽に行うことができます。月1回の通院が目安になります。 出典:株式会社Qlife,更年期障害におけるホルモン補充療法(HRT)に関する実態調査結果報告書

ホルモン補充療法の種類について

ホルモン補充療法の種類には、経口剤や経皮吸収型製剤、注射、膣錠などがあります。約7割の人が経口剤を服用しているそうです。 経口剤とは、口から服用するタイプで簡単で便利ですが、胃腸や肝臓に負担がかかることがあります。 経皮吸収型製剤とは、貼付剤や塗布剤のことを指し、皮膚から直接吸収され血液内にはいるので、内臓への負担は少ないといわれていますが、かゆみやかぶれなど皮膚症状が出ることがあります。個人差が大きいので、自分の身体に合った適切な治療薬を選びましょう。

ホルモン補充療法の普及率は?海外では高い普及率

日本のホルモン補充療法の普及率は約2%で、まだまだ更年期障害の治療法として浸透していないのが現状です。 しかし、欧米では既に30年以上の歴史があり、海外ではホルモン補充療法は一般的になってきています。もっとも普及率が高いオーストラリアでは56%、アメリカや欧米では30~40%の普及となっています。 出典:Vivan Lundberg : Use of oral contraceptives and hormone replacement therapy in the WHO MONICA project. Maturitas 48: 39-49, 2004.

ホルモン補充治療は何歳まで?いつから行う?

ホルモン補充療法を開始するタイミングとしては、閉経前または閉経後早期がいいといわれています。症状によって使用するホルモン剤も異なるので、ホルモン補充療法の治療期間は数カ月、2~3年、数年以上と人それぞれになります。 ホットフラッシュの症状改善に関しては、2週間程で効果が見られ、3カ月程度でおおむね改善するといわれています。

ホルモン補充療法の効果

ホルモン補充療法経験者が、実際に効果があったと考える症状例はこちらになります。 ・ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗など) ・頭痛やめまい ・イライラ ・不眠症状 ・動悸、息切れ ・疲れやすい そのほかに、期待される効果としては以下の通りです。 ・骨粗しょう症の予防と改善 ・萎縮性膣炎や性交痛の改善 ・ドライマウスや歯周疾患の予防と改善 ・関節保護作用、運動機能改善作用または姿勢バランスの改善作用 ・アルツハイマー病発症のリスクを低下させる可能性がある ・皮膚のきめ細かさやハリの改善 ・コレステロールので脂質異常を改善 出典:ホルモン補充療法ガイドライン2017 年度版

ホルモン補充療法の副作用

ホルモン補充療法の副作用の代表例は以下の通りです。これらの症状は、薬の頻度や量を調整して改善することができます。 ・不正出血 ・乳房痛 ・片頭痛 ・下腹部のハリ

乳がん・子宮内膜がんのリスクに関して

海外の研究結果から、乳がんのリスクは、ホルモン補充療法によって高まる可能性があるという懸念が長年持たれていました。子宮がある女性に併用される黄体ホルモンと5年以上の施行期間がある場合に、非常にわずか乳がんリスクが大きくなる報告はあります。しかし、乳がんによる死亡率をみると、ホルモン補充療法を行った場合の方が死亡率は低いといわれています。その後も、多くの研究結果から乳がんリスクは決して大きくないことが明らかになりました。 子宮内膜がんに関しては、エストロゲン単独で長期施行することは、発症を助長する可能性が高いと言われています。そのことから、エストロゲンと黄体ホルモンを併用することが基本になっています。 出典:①The Writing Group for the PEPI Trial : Effects of hormone replacement therapy on endometrial histology in postmenopausal women . JAMA, 275 : 370-375, 1996Jick SS, Walker AM, Jick H : Estrogens, progesterone, and endometrial cancer. Epidemiology, 4 : 20-24, 1993

更年期障害のホルモン治療は痩せる効果はない?

一般的に、更年期は太りやすい時期だといわれています。原因は女性ホルモンであるエストロゲンの減少です。エストロゲンには、脂肪の燃焼を促す働きや内臓脂肪を減らして体形を維持する働きがあったため、若い世代に比べるとダイエットが難しくなります。 ダイエットを成功させようと、過剰な食事制限や運動をする人もいますが、これらはホルモンバランスを崩す原因となり、余計に痩せにくい身体になります。 ホルモン治療自体に痩せる効果はありません。しかし、ホルモン補充療法を行うことでホルモンバランスが安定するので、ホルモンバランスの分泌サイクルを生かし、新陳代謝を改善することができるでしょう。

ホルモン補充療法のやめどきはいつ?

ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版によると、「HRTの投与継続を制限する一律の年齢や投与期間はない」とされています。 ・ホルモン補充療法をお継続して行う上での明確なメリットがある ・患者が継続を望んでいる ・リスクについて患者・家族が十分に理解し情報共有がとれている(インフォームドコンセント) ・少なくとも1年に1回、ホルモン補充療法継続の必要性とリスク評価を患者と共有する 上記の事項を達成している場合は、ホルモン補充療法はいつまでも続けることができますが、やめどきについては、ホルモン量や症状をみながら、漸減して辛くなければかかりつけ医とやめる方向に相談してみるのがいいですね。

まとめ

いかがだったでしょうか。「ホルモン補充療法(HRT)」について、やめどきや費用のことなどについてまとめてみました。更年期特有の女性の悩みは、決して我慢するものではありません。適切な対処法をとって日々の生活を楽にしていきましょう。 関連書籍はこちら▷松峰寿美監修「50歳からの婦人科―こころとからだのセルフケア」  

監修プロフィール

松峯 寿美(まつみね ひさみ)先生

松峯 寿美(まつみね ひさみ)先生

医師・医学博士。日本産婦人科学会専門医。東京・木場にある東峯婦人クリニック理事長。とくに不妊治療、思春期・更年期医療に力を注ぎ、女性専門外来の先駆けとなる。また、日本にまだ数少ない産前産後ケアセンター・東峯サライを開設。
著書に「50歳からの婦人科」「60歳からのセックスクリニック」等、様々なライフステージの女性たちの体の悩みに関する講演等でご活躍。

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