性の安全基地はどう作る?

最終更新 2024.05.11 by WOMB LABO編集部

こんにちは、植物療法士の柏木春香です。

前回のコラムVol.2「子どもと飛び込む性の世界」では子どもたちとどう性について話をするのか、そして性教育がなぜ必要なのかについてお話をしました。

今回Vol.3では、さまざまな性、そして受け入れることについて、お話をしていきます。

 

色んな性、知っていますか?

前回のコラムの中で「あなたのノーには価値がある」ということについて触れました。それはつまり一人一人が尊重され、大切にされるべき存在であるということでもあります。どんな人種だろうと、立場だろうと同じ。そしてそれは、どんなセクシュアリティであろうと同じ。

では、どんなセクシュアリティがあるか、ご存じですか?最近では「LGBTQ」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。ではここで、LGBTQについておさらいしましょう。

L レズビアン 女性を愛する女性のこと

G ゲイ 男性を愛する男性のこと

B バイセクシュアル 男性と女性どちらも愛する対象となる人

T トランスジェンダー 出生時に割り当てられた法律上の性と性自認が異なる人

Q クィア 規範的ではない性の在り方を包括的に表す言葉
    クエスチョニング 自分自身の性的指向や性自認がはっきりしていない人、意図的に決めていない人 

 

こんなにたくさんのセクシュアリティが存在すること、ご存じでしたか?

 

一般的には生まれ持った性と性自認が同じ(シスジェンダー)や異性愛(ヘテロセクシュアル)が当たり前と考えられがちですが、実はセクシュアリティは人それぞれ異なります。そしてどんなセクシュアリティであろうと、等しく尊重されるべき存在です。

 

LGBT総合研究所による調査によると2019年時点で、LGBTおよび性的マイノリティの割合は約10%。つまり10人に1人いるということになります例えば学校が1クラス40人だとすると、そのうち4人はセクシュアルマイノリティに属する人。社会にはそれだけの人数の性的マイノリティと呼ばれる人が存在しています。さらに、そのうちの78.8%が自分のセクシュアリティをカミングアウトしておらず、当事者の半数が誤解や偏見が多いと感じています。

これまでの日本社会では異性愛者が当たり前という通念のもと歩んできました。女性は男性が、男性は女性が好きだろうという大前提のもと繰り広げられる会話や、社会にはあたかも男性と女性しかいないと言っているようなアンケートの性別解答欄。こういう場面に遭遇するたび、LGBTQに該当する人々は一体どんな気持ちを抱え、過ごしてきたのでしょうか。疎外された気持ちを感じたり、はたまた絶対にカミングアウトしてはいけないという気持ちになったり…苦い経験をしてきた方が多いのではないかと思わざるを得ません。

LGBT総合研究所のアンケートでは、性的マイノリティの人たちに対しどう接していいかわからないという意見も見られ、LGBTQを特異なものとして、あるいはそもそも無いものとして扱ってきた結果が現れているのではないでしょうか。

では、今このコラムを読んでくださっているあなたのセクシュアリティは何ですか?筆者は生まれ持った性と性自認が同じ(シスジェンダー)、そして異性愛者(ヘテロセクシュアル)です。しかし、そんな私から生まれてきた我が家の子どもたち二人は、もしかするとセクシュアルマイノリティかもしれませんね。それはまだわかりませんが、仮にそうだった場合、迷わずに打ち明けられるような環境がそこにあるといいですよね。

これまでの人生、セクシュアルマイノリティに属する人に何度か出会ってきましたが、外見からはそうであることは全くわかりません。そのため、セクシュアルマイノリティの人に出会っていても、気づいていない人もたくさんいることでしょう。話をしていく中で、カミングアウトされて初めてわかるのです。つまり、マジョリティーであるシスジェンダーやヘテロセクシュアルに属する人たちと外から見た姿は何らかわりないということ。それを、社会や文化が異質なものとして扱ってきた結果、偏見の目で見られるようになってしまったのでしょう。

 

しかし性分野において多様性が語られる時代になったからこそ、これからの時代を生きる子どもたちには、一人一人違った「その人にとっての当たり前」を受け入れられるようになってほしいそのためにこれからの時代を作っていく子どもたちの意識に働きかけていくことは、大人がまずできること。

では大人は子どもたちにどう働きかけていくのが良いのか?

 

まずは人それぞれの持つマイノリティ性に対し、前向きな姿勢でいること。子どもは大人の言動や振る舞いから、身近な大人の持つ価値観を敏感に感じ取り、常に吸収しています。そして見て学んだことを、自らの発言や振る舞いに変えていきます。例えば大人がLGBTQの人々に対しネガティブな発言をしたとします。まだ価値観を形成している途中の子どもたちの頭の中にはLGBTQ=ネガティブなものとインプットされていくことは想像に容易いことですね。

そしてLGBTQとは何なのか、どんな人たちなのかを正しく知り、それを子どもたちに伝えていきましょう。子どもたちの心は、大人に比べてずっと柔軟ですから、大人が思っている以上にすんなりと受け入れることができます。LGBTQについて実際のところ詳しくしらないから…という大人の方は、子どもと絵本を読んでみたり、インターネットで調べてみたり、一緒になって学んでいけば問題ありません。親が前向きに捉えている姿勢を見せるのは子どもにとってはとても効果的なのですよ。

気負わず、ちいさな一歩を踏み出そう

 

私の身近に杉山文野さんという方がいらっしゃいます。子ども同士が同じ幼稚園に通っていて、その保護者として出会いました。素敵なパートナーの女性と二人の子を持つ温かなファミリーで、子どもたちにとっても優しいパパという印象でした。

しかし彼は実はトランスジェンダー。見た目は男性でありながら戸籍上は女性です。あくまで知識としてLGBTQを存在を知っていた私は、当事者である彼がこれまでの人生をどのように歩んできたのか、そしてどのような経験をしてきたのかということに直に触れ、自分が見ていた世界との違いに驚きました。

印象的だったのは日本社会におけるセクシュアルマイノリティの方々の精神的安全性の低さについて。例えば、日本は戸籍の変更が難しく、文野さんの場合、見た目は男性でも戸籍上は女性のままなのだそう。そうなるとカミングアウトしたくなくても役所などの公的機関にかかるとどうしてもバレてしまう。また、男性女性どちらのトイレにいけばいいかわからず、外出先で自由にトイレに行くことすらできないなど。こういった現実は普通に生活している中ではなかなか知り得ないことですが、トランスジェンダーの方は数多くの負担を抱えながら日々生活しているのです。

とある講演の中で、文野さんは「気負わずに小さな一歩を踏み出そう」とおっしゃっていました。ウェルカミングアウト、つまりLGBTQに関して、前向きな発言を敢えて口に出していくことを推奨しています。LGBTQ当事者が見た目だけで判断できないのと同じように、LGBTQの活動を支持し、支援している人たち(=アライ)も外見だけでは判断できないのです。そこで敢えてLGBTQに関する前向きな発言をしていくことで、安心感を生んでいこうというのです。LGBTQに理解がある人が可視化されることで、セクシュアルマイノリティの方々の心理的安全性は高まっていくのではないかと、文野さんはおっしゃいます。

まるっと受け入れてみよう

ここまで述べてきたように、LGBTQに属する人たちも、みんな同じ人間。知らないと何だかよくわからなくてドキドキしちゃうけど、正しく知れば何も怖くないのです。そうすればきっと、彼らの存在をまるっと受け入れ、前向きに捉えていけるはず。

そしてそうするためにはコラムVol.1「今こそ正しい性教育のとき」でもお伝えしたように、まずは自分の体と心を認め、受け入れてあげることが大切。自分のありのままの姿を「これでいいんだ!」と思えたときに、他者に対する心からの受け入れができるのではないでしょうか。自分を受け入れ、他者を受け入れることができたら、きっとそこから良い循環が生まれていくでしょう。

LGBTQについて学べるサイトや書籍などもぜひ参考にしてみてくださいね!

 

■参考ウェブサイト

NPO法人東京レインボープライド

https://tokyorainbowpride.org/

一般社団法人LGBT協会

http://www.lgbt-kyokai.com/index.html

SDGsコネクト

​​https://sdgs-connect.com/tag/lgbtq

 

■参考書籍

元女子高生パパになる 杉山文野(著)

https://amzn.asia/d/8NdWToe

 

次回は「自分の体をどう大切にしていくか?」についてお話をします。

著者プロフィール

柏木春香(かしわぎはるか)

AMPP(フランス植物療法普及医学協会)認定メディカルフィトテラピスト

福岡生まれ。産後の不調を機に漢方やハーブの素晴らしさを知り、植物療法の世界に入る。現在は植物療法コンサルテーションやハーブのブレンドを行うかたわら、SNSを通じて植物療法のこと、健康やセクシュアリティの大切さを伝えている。instagram:mul.phyto

 

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