最終更新 2022.02.14 by WOMB LABO編集部
もくじ
第3回 「セクソロジー」の社会学的、教育学的な側面について
Bonsoir (こんばんは)、クロードです。
今夜はいかがお過ごしでしょうか?
第2回は「セクソロジー」の医学的、心理的な側面について、お話してきました。
第3回となる今回は社会学的、教育学的な側面について、お伝えしていきたいと思います。
セクソロジーの正しい教育で女性の性を解放する
わたしがセクソロジーの中で大事にしたいと考えているのが教育学的な観点です。
というのも、正しい知識があれば、日本の女性はもっと自由に行動できるからです。
海外から見ても、非常に洗練された文化を持つ日本ですが、近年は経済に重きを置くことで、急速に発展を遂げてきました。
ところが日本人女性はいまだに男性よりも地位が低いです。収入も低いし、女性の管理職やリーダーも少ない。国会議員に占める女性の割合に至っては、先進国の中で最低水準です。
経済的、政治的なことだけではありません。日本の女性は、「性」に関することでも、積極的に知識を得る機会がありません。これは大きな問題です。
ちなみに、日本の「性」を表現する文化といえば、江戸時代に人気を博した「春画」でしょう。しかし、男性の生殖器の高揚を描いているものが多く、同時に女性の服従を強いていました。
1975年以降の日本では、映画界において、より極端な性を表現する作品が発表されるようになりました。世界に衝撃を与えたのは、大島渚監督作品の『愛のコリーダ』。「去勢と死」をテーマにしたストーリーとその表現がエロティシズムの限界を更に押し広げたと言えるでしょう。
しかしながら、女性の「性」が解放的なのは映画の世界だけに止まっており、日本の女性は当時も、そして2020年代のいまでも、女性としての「性」の可能性や、女性であることを謳歌する「自由」や「権利」があることを知らずに、生きています。
だからこそ、このタイミングで日本にセクソロジーを広めることで、音楽家が音を奏でるように、自分の身体は「性」の喜びを感じる「楽器」であり、その喜びを自ら発見するんだよ、と女性のみなさんに伝えていきたいと考えています。
昭和11年、愛人を殺害した上、男根を切り取って懐に入れ、数日間逃亡していた女性・阿部定が逮捕された。実際に起った阿部定事件を題材に、究極の愛とエロスを描き、世界を瞠目させた衝撃作。
女性の社会的排除を解消する
女性が社会的にその存在をしいたげられているのは、いまだに男性優位の社会だからです。
そこで、社会から排除されている女性の声に耳を傾けることで、女性の性的な解放を助けるキッカケを作ることができると考えています。
また、男性と女性は身体も心も全く違います。それを理解しましょう。さらに、愛や恋に関する男性と女性の感じ方にも相違があります。
そして、「セックス」はパートナーと「性」の喜びを共有することである、ということも、ぜひ知って欲しいと思います。
もちろん、いま注目されている「ジェンダー」関係の課題にも取り組んでいます。
男性による女性の支配という問題だけでなく、すべてのジェンダーに対する違和感や、性同一性障害などの性的な障害、「性」における精神的な苦痛などを取り除くことを研究しています。
セクソロジーは本当の意味で男女平等を達成するためにも、ぜひ活用してほしい学問です。
さて、第2回、第3回と、セクソロジーの医学的、心理的、教育的、社会的な側面をお伝えしてきました。いかがでしたでしょうか?
わたしが伝えたいのは、「性」を知ることは、いやらしいことでも、恥ずかしいことでもない、ということです。
それよりも、正しく「性」を理解することで、自分自身の世界や可能性を広げてほしいのです。
「セクソロジー」も同様に、正しい「権利」を手に入れるために必要な研究なのです。すべての人が正しい「性」の情報を手に入れられる世界を作ること。それこそがセクソロジーの目的です。
だからこそ、この連載で「セクソロジー」について引き続き伝えていきたいと思います。
では、今夜はこの辺で。またお会いしましょう。
Bonne nuit(おやすみなさい)
著者プロフィール
Dr. Claude Esturgie
クロード=エステュールジー
医師・医学博士
パリ臨床セクソロジー性医学 セクソローグ(性医学者)
性医学科学アカデミー会長 (2005-2016)
パリ臨床セクソロジー(性医学)仏医学会副会長
セクソアナラジス(性分析)国際研究所(モントリオールケベック州)名誉会員
同研究所にてストーラー賞受賞