フランス人女医が語る、女性の「性」との付き合い方
vol.4 産婦人科医師としての仕事①

フランス人女医が語る、女性の「性」との付き合い方 vol.4 産婦人科医師としての仕事①

最終更新 2022.07.07 by WOMB LABO編集部

Salut(こんにちは)!
みなさん、ベランジェール・アルナールです。

今回は産婦人科で実際にどのような診察・検診をしているかについて、ご紹介しましょう。

「産婦人科」という言葉を聞いたことがあっても、実際にどういうことを診断しているのか、10〜20代の女性は知らない人も多いかもしれません。

また、大人の女性の方々は多かれ少なかれ、産婦人科にかかった経験があると思いますが、フランスでの診察・検診を知ることで、今後、産婦人科にかかるときの参考にしていただければ幸いです。

診断における私の心構え 3つのキーワード:温かく迎える、しっかり聞く、優しく接する~問診票~

まずは初診の前に「問診票(質問シート)」に記入していただきます。来院してからではなく、事前に郵送かメールで送付して記入してもらいます。家で落ち着いて記入することで、過去の病歴を思い出したり、口頭では説明しにくいことを記入したり、焦らずに自分と向き合うことができるからです。

内容は直近の検査結果、手術・解剖病理学的な報告書、そのほか診断に必要になりそうな診断書などをお持ちいただいています。それを時系列に並べていただけると、短時間で判断ができるのでありがたいとお伝えしています。なお、問診票には産科・婦人科に関係することだけでなく生活全般の、診断に必要なすべての情報が網羅されています。

次に診断です。最初に必ず「こんにちは、ようこそ」とお声がけするようにしています。そして、問診票をみながら一緒に内容を確認していきます。こうすることで書いてある内容を正確に理解することができるからです。

ここで問診票の一部抜粋したものを紹介しますね。

家族歴:
乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、結腸がん
血栓塞栓症、静脈炎、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞
(早期または後期にかかわらず)母親の閉経年齢、糖尿病、高血圧、肥満など医師が知っておくべき家族の病歴。

病歴および手術歴:
確認すべき病気は?それはいつ起きたのか?その時に施された外科的処置、どのように、いつ行われたのか?

諸症状:
アレルギーがあるか?腸、循環器、甲状腺の問題、泌尿器疾患、感染症、失禁障害に苦しんでいるか?重大な外傷を負ったことはあるか?車、馬、スキーなどの事故など

日常:
□ ご自身の体調について、調子はいかがですか?
□ 喫煙者の場合:1日あたりのタバコの本数、喫煙期間。肺の最新のX線レントゲンはいつ受けましたか?
□ 毎日、又は定期的に、どのような薬を服用していますか?自然療法で治療されていますか:植物療法、ホメオパシー、鍼治療など
□ どのような食生活を送っていますか?定期的に大豆製品、あるいは、乳製品を消費していますか?オーガニック食材は好きですか?
□ 定期的にスポーツをしていますか?
□ 精神的な健康はどうですか?心理療法、精神分析を受けましたか?または、受けていますか?ヨガ、ソフォロジー療法、瞑想、リラクゼーション、または他の自己啓発の療法を行っていますか?

婦人科の病歴:
初経の年齢、最後の月経の日付、出血の量、血栓の有無、周期の長さと規則性について。
月経痛はありますか?その強さ、持続時間、痛みを和らげる薬を服用していますか? 月経前症候群または排卵症候群で周期が乱れていますか?どのような症状に特に悩んでいますか?1から3のスコアで、痛みの強さを、そして、持続時間を教えてください。
線維腫、乳房症、子宮内膜症、婦人科感染症に苦しんでいますか?

産科の病歴:
妊娠の数とその経過。健康な子供を出産したか、流産、子宮外妊娠、妊娠治療の終了、流産、中絶(どの方法で?)、生殖補助医療、その他
妊娠中の体重増加はどれくらいでしたか?出産の経過は?可能であった場合、どのくらいの期間、母乳で育てましたか?

避妊薬:
経口避妊薬の薬名を教えてください。
現在の避妊薬は何ですか?局所、エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲストーゲン(黄体ホルモン)ピル、マクロプロゲストーゲンピル、マクロ投与プロゲスチン、銅付可IUD(子宮内避妊用具)またはプロゲステロンIUD・その挿入日は?

更年期:
いつからですか? どのような症状(のぼせ、腟の乾燥など)ですか?更年期ホルモン療法を受けましたか、または受けていますか? どのくらいの期間、また、いつから?

セクシュアリティ:
(質問に答える義務がないことが明記されています)性的な問題について話したいですか?

婦人科サーベイランス検査:
マンモグラフィ、乳房超音波検査、子宮超音波検査、骨盤超音波検査、塗抹標本(とまつひょうほん*1)、血液検査、骨密度測定。直近の検査結果を持ってきてもらい、検査日付も教えてもらいます。

*1 白血球や赤血球の成城や比率などを詳しく調べるために、血液を小さなガラスの板に塗りつけて色素で染色。顕微鏡で細胞の種類などを判定するもの。

そして最後に、患者さまには書面で診断理由を書いて頂きます。

通常、理由は簡潔で短いものです。 時として、不安から問診票一面(上、下、横の余白など)に理由が書かれていることがあります。下線が引かれたり、文章が強調されたりして、しわくちゃになってしまった問診票を受け取ることもあります。

質問票の最後には、妊娠、がん、または不妊の場合を除いて、付き添いの人なしで、一人で患者さまを診断したいと記しています。 そしてもちろん、もし患者さまが母親が未成年の娘に同行したい場合は、その娘の同意を得て行います。

なぜ患者さまを一人だけで診断するのか?それは、患者さまとの信頼関係を築くためです。そうすることで次回以降の診断がスムーズに進みます。

手を組み椅子に深く座り、診断の間ずっと医師を見ているだけの、反論するだけの配偶者は、時として邪魔になることがあります。ましてや、配偶者が患者さまの変わりに口を出して答えるようになると、医師は客観的に診断することが難しくなります。

ですので、私はいつも配偶者に健康診断中は診断室から出て行くようにお願いします。ほとんど問題にはなりませんが、時には残念なことも起きます(*2)。ですが、幸いなことに、例外的に、一緒にいることで素晴らしい体験ができることもあります。

私は質問票を注意深く読み、コメントし、追加の質問をし、患者さまからの質問に最初から答えていきます。診断の間、患者さまの短く発せられた言葉や沈黙、視線に注意を払い続けます。

*2 一度、私のクリニックから出されたことを怒った患者さまの配偶者(夫)から、「馬鹿」などの言葉で侮辱されたことを覚えています。涙を流して診断を終えたこともあるのですよ。

さて、今回は問診票とそれを使った導入についてお話しました。

それでは今日はこの辺にいたしましょう。
Au revoir(さようなら)

著者プロフィール

dr-Berengere-Arnal

Dr. Berengere-Arnal
ベランジェール=アルナール

医師・医学博士

パリ第13大学医薬学部 元教授
婦人科専門医

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