娘に伝えたい膣のおはなし

最終更新 2024.06.11 by WOMB LABO編集部

こんにちは、植物療法士の柏木春香です。

今回Vol.4では、「自分自身の生まれ持った性を大切にする方法」について、今回は女性の身体に焦点を当て、実践的なお話をしていきます。

コラムVol.3「性の安全基地はどう作る?」の中で自分の心と体を認め、まるっと受け入れることが、他者の受け入れに繋がっていくというお話をしました。

例えば心を認め受け入れる、というと、自分の気持ちや考えを受け入れる、などイメージしやすいでしょう。では、体を認め受け入れるとは、どういったことなのでしょうか。

これまでの日本では置いてけぼりにされがちだった、自分の身体を大切にするということについて、詳しく見ていきましょう。

膣まわりは身体と心のバロメーター

突然ですが、あなたは自分の身体や性器をじっくりと観察したことはありますか?

身体の作り、仕組みについて、十分な知識がありますか?

さらに、女性器を持つ方に質問ですが、デリケートゾーンのケアはしていますか?

2023年に働く女性の医療メディアILACYで行われた調査によると、全国15~69歳の女性1000名のうち84.2%が「ケアをしていない」と回答しています。

「している」と回答した人のうち、74%がデリケートゾーン用ではないソープ(ボディソープや石鹸等)で洗っているという結果に。

この結果が何を意味しているかというと、「自分の身体に無関心」ということではないでしょうか。

一般的にあまり意識されることはありませんが、膣まわりはとても繊細で大切な場所。

女性の生涯を通して、排泄、生理、セックス、妊娠、出産、閉経と、人生におけるあらゆることに関わってくる場所です。

産婦人科専門医の世界的権威であるベランジェール・アルナール先生は「膣まわりは、からだの健康や精神バランスを推し量る大事なバロメーター」とさえも言っています。

そうは言っても膣周りを見るなんて…まして触ってみるなんて…!と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

けれど、自分の身体について知ることは何も恥ずかしいことではありませんし、世界的に見ても膣まわりのケアをすることは女性としてごくごく当たり前のことなのです。

その第一歩として、自分の身体に向き合い、どんな作りになっているのか、どういう役割を持つのかを知り、あくまでご自身のペースを大切にしながら、自分を慈しむ意味でも、膣周りのケアに進んでいきましょう。

ここで一番大切なのが、人と比べないこと。性器の形も色も人それぞれ。

一人として同じものはありません。

これって普通かな?変じゃないかな?なんて考えずに、自分のありのままの姿を受け止めましょう。(女性器の詳しい構造については、コラムVol.2でご紹介した、女の子のからだえほんをご参考になっても良いかもしれません。)

近年、日本でもやっと「フェムケア」「フェムテック」などのワードが話題に上がるようになりました。

薬局に行けばデリケートゾーンケア用品が並ぶ棚があったり、オーガニックにこだわった商品が増えてきたりと、少しずつ日本における地位を確立しつつあるのかもしれません。

このコラムを読んでくださっている方にとってはおそらく関心度が高く、既にフェムケアをやっているという方も多いことでしょう。

フェムケアとして一番に初めていただきたいのが、デリケートゾーンケア

デリケートゾーンのケアとは、デリケートゾーン専用ソープで洗う、専用の保湿剤で保湿する、オイルマッサージをするなどのこと。

お顔は洗顔料、身体はボディソープと、パーツごとに洗浄剤が変わるように、デリケートゾーンにはデリケートゾーン専用のソープがあります。

デリケートゾーンはph3.8~4.5と弱酸性で、皮膚の中で一番敏感な場所。

しかし、排泄物や汗などさまざまな汚れが混じり合い、さらには構造上汚れが溜まりやすい場所なので、しっかり洗う必要もあります。

だからといって一般的なボディソープで洗ってしまうと、洗浄力が強すぎるため、お肌にとって必要な常在菌まで奪ってしまいます。

この常在菌は膣のバランスを保ってくれる役割があるので、常在菌が奪われてしまうと乾燥や痒み、ニオイなどのトラブルに繋がることも。

そのため、きちんとデリケートゾーン専用のソープで洗うことが必要なのです。

また、身体の他のパーツと同じように乾燥もします。

デリケートゾーンは衣類やナプキンなどの摩擦も加わりトラブルが起こりやすい場所。さらに加齢とともに減っていくエストロゲンの影響を受けやすい場所でもあります。

エストロゲンとは女性の身体を女性らしく保つ役割があるホルモンですが、エストロゲンが減っていくと膣の潤いも減っていくのです。

さらに加齢とともに膣壁は次第に薄くなり、それに伴って膣壁や子宮頸管から分泌される粘液も減っていき、膣の潤いがなくなっていくのです。

何のケアもせずにいると、痒みやニオイなどの様々なトラブルが起こるのに加え、どんどん劣化していってしまうのもその特徴。

女性器は第二の顔とも呼ばれており、お顔と同じように正しく丁寧にケアしてあげることが必要です。

デリケートゾーンケアを怠ったまま加齢が進むと、将来的にGMS(閉経関連泌尿生殖器症候群)などの深刻な悩みに繋がることも。

一日でも早くデリケートゾーンのケアを。

こういった理由から、デリケートゾーンのケアは女性にとって必須。

何歳から始めても早すぎることはありませんし、早ければ早いほど良いでしょう。

その一方で、これほどまでに大切なデリケートゾーンケアについて知る場がない、そして教えてくれる人もいないというのが実情です。

デリケートゾーンのケアについて人から教えてもらった経験があるかという質問に対し、「ある」と回答した人はわずか9.9%。

子どもにとって身近な大人である母親や父親、もしくは家族の誰かしらが、幼い頃からケアの仕方を教えてくれたらならば、子どもはどれほど心強いでしょうか。

生まれ持った身体を慈しみ、成長段階に応じたケアの仕方を教えてもらえるということは、子どもにとって生涯を通して大きな財産になるのではないでしょうか。

ちなみに我が家では、5歳の娘も既にデリケートゾーン用のソープを使っています。

そして8歳の息子も同様に専用ソープを使います。娘が幼稚園に入った頃から、「おまたは自分だけの大切な場所だから、おまた用の石鹸を使って、自分できれいに洗うんだよ」と説明しました。

我が家では母親である私が実際に手を出すことはなく、あくまで口頭で、丁寧にわかりやすく説明することで間接的にサポートしています。

ケアの中で大切なのは専用ソープを使うこと、そして自分自身できちんと正しく洗えるようになること。

特に子どもは成長するにつれて、汗や皮脂の分泌も活発になり、女の子は生理が始まり、分泌物や汚れが溜まりやすくなっていきます。部活動などスポーツをする子は、汗の影響で蒸れやすくトラブルも起こりがち。

適当に洗っておしまいではなく、自分自身できちんと洗えるようになっておくことは、快適な毎日のために欠かせません。

何となく洗って何となく放ったらかしにしてしまいがちなデリケートゾーンですが、幼い頃から大人が正しく教えてあげればしっかりとケアする習慣がつきますし、自分の身体に意識を向けるきっかけにもなります。

実際に、我が家の子どもたちは早くから声がけをしていたこともあってか、デリケートゾーン用のソープを使うことが当たり前になっています。

ちなみに我が家では子どもでも簡単に使え、そしてしっかり洗えるように、泡タイプのソープを使っています。

「インティメイトフォーミングウォッシュ」

https://waphyto.com/collections/intimate/products/intimate-foaming-wash

デリケートゾーンの皮膚はまぶたと同じくらいの薄さだと言われており、非常に繊細。

ただでさえ乾燥しやすい場所なので、摩擦による刺激が少なく洗える泡タイプが手軽でおすすめ。

そして洗い方もとても重要です。

手を使い、ゴシゴシ擦らずあくまで優しく洗います。デリケートゾーンのヒダの間や、シワの間など、隅々まで注意して丁寧に洗うようにしましょう。

そしてお子さん自身で綺麗に洗えるようになることを、ゆっくりサポートしていきましょう。

次に大切なのが保湿。

膣周りは身体の中で最も乾燥しやすい場所です。お風呂から出たらまずお顔のケア…といきたいところですが、ぐっと我慢して一番に膣周りの保湿を行いましょう。

フェムケアが流行っている昨今、様々な保湿アイテムが出ています。膣周りの経皮吸収率は腕の内側を1とした時に、42倍と非常に高く、さらには吸収された物質が体外に排出されにくいため体内に蓄積されていきやすいと言われています。

ゆえに、ナチュラルでオーガニックな質の高いものを選ぶ様に心がけると良いでしょう。

ここで、筆者がおすすめする保湿アイテムをいくつかご紹介します。

 

「アンティーム ローズローション」

https://intime-cosme.com/shopdetail/000000000222/

肌に潤いを与えるデリケートゾーン用補水ローションで、ベタつき感なく潤いを保ってくれます。性交痛がある方は潤滑剤としても使っていただけます。

 

「アルジタル デリケートハイジーンニアウリクリーム」

https://argital.jp/product/bodycare/hygienecream.html

デリケートゾーンの保湿はもちろんのこと、下着が擦れやすい足の付け根やおしりの保湿にも。

また、肌荒れが気になる顔やワキ、ボディなど、マルチに使えるクリームで、一本あると便利です。

 

「ワフィト インティメイトオイル」

https://waphyto.com/collections/intimate/products/intimate-oil?gad_source=1&gclid=CjwKCAjwouexBhAuEiwAtW_Zx03DdBMJDMf1HaXS6sXgOp1VoQau5CyvMZh73aKd_UguHDUXthuccRoCMoIQAvD_BwE

ベタつかずサラサラとしたオイルで、さらに高保湿。

乾燥や加齢によるハリ不足にしっかりとアプローチしてくれます。天然精油の香りも良く、保湿しながら癒されるアイテムです。膣のオイルマッサージにも。

お顔やボディのケアと同様に、デリケートゾーンのケアは習慣にしていきたいもの。

長く付き合っていく自分の身体の中でも、知らず知らずのうちに酷使されがちな、特に頑張ってくれているパーツだからこそ、きちんとケアしていきましょう。

粘液力は免疫力

デリケートゾーンのケアというとセックスのため?と思う方もいるかもしれませんが、実はデリケートゾーンに関係ない場所にもその効果は現れるもの。

日本人にとっては馴染みのない考え方かもしれませんが、実は粘液=免疫力」であり、粘膜で覆われている膣が潤っていることは免疫にとって非常に大切なのです。

人間の身体には目や鼻など粘膜で覆われている場所がありますが、粘膜から出る粘液が細菌やウイルスなどが体内に入らないようブロックしてくれています。

粘膜が乾燥していると、簡単に病原菌が身体の中に入っていってしまうということ。

膣から分泌される粘液である「膣液」も同じ役割を持っており、膣の潤った状態を保つことで、様々な感染症にもかかりにくくなります。

膣の乾燥は女性特有の月経にまつわる不調、不妊症や更年期障害などにも関わってきます。

さらに膣の乾燥した状態は女性ホルモンのバランスの崩れを招き、身体全体の老化を引き起こしかねないのです。30代〜40代の現代女性は仕事にプライベートにと忙しい方が多く、さらに子育も…となると自分のことは後回しになりがち。

現代の忙しい生活では何かとストレスも多く、スマホやパソコンの長時間使用により睡眠に影響が出ている方も多くいらっしゃいます。

様々な不調に悩まされているにも関わらず、自分は元気だと自己を奮い立たせながら日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。

そんな状態で年齢を重ね、膣周りのケアもしないでいると、膣周りの老化がどんどん進み、気づいた時には更年期障害がひどくて…ということも。

しっかりと膣周りをケアして粘液力をキープすることで、いつまでも若々しく元気に、加齢に伴う諸症状や更年期障害に悩まされることなく過ごしていけたらいいですよね!

ちなみに筆者の周りでは、デリケートゾーンのケアを始めたことで女性特有のトラブルの改善やニオイや痒みなどの改善に繋がっただけでなく、肌艶が良くなったという意見が多数。

粘膜が潤ったことにより体全体の免疫が上がり、結果として肌も元気になったということでしょうか。肌が潤い綺麗な状態であると、毎日気分が前向きになりますよね。

まずは自分自身が健康になるため、自分のためのフェムケアを始めましょう。

そういったケアが生涯に渡り女性にとって必要不可欠であること、それがどの様に女性にとって良い効果をもたらすかということをいつも頭の中に置いておいてくださいね。

そして子を持つ方は、自分が生まれ持った性にまつわるあれこれが決して面倒なことではなく、慈しみ大切にすべきものであるということを、幼い頃から伝えてあげましょう。

 

性の話に蓋をされ続けてきた日本でも、やっと膣周りのケアの大切さが言われる様になってきました。それは事実として、女性の身体とこころにとってメリットがたくさん、長い人生を健やかに過ごすために、欠かすことのできないことだから。

自分の身体を知って、受け止めて、丁寧に扱ってあげれば、それは間違いなく良いこととなって自分に返ってくるのです。

まずは何よりも自分の身体と心を大切に、自分の膣にありがとうと感謝しながら過ごしてみましょう!

■参考ウェブサイト

働く女性の医療メディアILACY

https://www.ilacy.jp/

■参考書籍

潤うからだ 森田敦子(著)

https://intime-cosme.com/shopdetail/000000000014/

私のからだの物語 森田敦子(著)

https://intime-cosme.com/shopdetail/000000000247/book/page1/recommend/

次回は「セックスってなに?」についてお話をします。

著者プロフィール

柏木春香(かしわぎはるか)

AMPP(フランス植物療法普及医学協会)認定メディカルフィトテラピスト

福岡生まれ。産後の不調を機に漢方やハーブの素晴らしさを知り、植物療法の世界に入る。現在は植物療法コンサルテーションやハーブのブレンドを行うかたわら、SNSを通じて植物療法のこと、健康やセクシュアリティの大切さを伝えている。instagram:mul.phyto

 

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