こんにちは、植物療法士の柏木春香です。
前回のコラムVol.4「娘に伝えたい膣のおはなし」では生まれ持った女性性を大切にすることについてお話をしました。今回Vol.5では、「子どもにどうセックスのことをつたえるか」についてお話をしていきます。
もくじ
セックスってなに?と聞かれたら
ある日唐突に、お子さんから「セックスってなに?」と聞かれたらどうしますか?もし聞かれなかったとしても、お子さんに彼氏や彼女がいるとわかったら、どうでしょうか?
これまでにもお伝えしてきている通り、性欲は自然な欲求で、心身が健康な状態であれば、男女関係なくあって当然のものです。そして子どもであろうと、そういったことに興味を持っていくのはごく当たり前のこと。
けれどいざそんな状況に置かれたら、親としては様々な心配が頭をよぎりますよね。そんな時、どう声がけをし、どう話をすると良いのでしょうか?
まず、子どもの方からセックスって何?と聞いてきてくれた場合。
この場合は大人側が恥ずかしがったり、言葉にすることを躊躇したりせずに、できる限り淡々と説明するのが◎。そしてセックスの時にどういうことが起こるのか、また、非常に自然な行為であることを伝えてあげましょう。
ここで大人が何かを隠そうとしたり、ためらったりしてしまうと、子どもも同じようにセックス=後ろめたいことと感じるようになってしまいます。セックスをいやらしいものとして教えてしまわないよう、大人側の心構えもしておきましょう。
次に、何の心構えもなく子どもに彼氏や彼女ができたとわかった場合。
お子さんが思春期を迎えていたりすると、ただでさえ口にしづらい性の話題が、より一層触れづらくなってしまいますよね。
しかし思春期の子ども相手でも一貫して大切なのが、あくまで淡々と情報を伝えること。親としての私的な感情がこもってしまうと、自分の世界を持ち始めている子どもたちの心は一気に閉じてしまいかねません。
子どもに大切なパートナーができたことを認め、彼氏彼女との付き合いの中で起こること、そしてそこに潜んでいるリスク、気をつけるべきことなどを、あくまで客観的な意見として伝えてあげましょう。思春期に入っていて、親の意見を聞いていないように見えたとしても、子どもはまだまだ大人の助けを必要としています。そして信頼できる大人の意見は、きちんと心に留めておくはず。ぜひ真剣な気持ちで、お子さんに向き合ってみてください。
自分の気持ち、相手の気持ち
では次に、具体的に気をつけるべきことについてみていきましょう。
みなさん「性的同意」という言葉はご存じでしょうか。あまり馴染みがないかもしれませんが、性的な行為をするにあたって、いいのか、だめなのか、具体的にどういうことならいいのか、などお互いに合意を取ることです。恋人同士だからといって必ずしもセックスをするものでもありませんし、心構えができていない、そういう気分ではない、本当はしたくない、など、セックスに関する捉え方は人それぞれ。
それなのに、何となく大丈夫そうだったからとか、部屋に来てくれたからとか、キスをしても断られなかったからとか、曖昧な判断基準で進めるべきではないのです。
仮に同意なく行われた場合「性暴力」となってしまいます。性暴力とは「性に対する人権侵害」であり、嫌だな、気持ち悪いなと感じることや、望まない性行為は性暴力にあたります。
相手に対する好意をもってしたことが、相手を傷つける結果に終わってしまうことは双方にとって悲しいことですね。性的同意を取ることは、自分を大切にすること、相手を尊重することに直接的に関わってくることですから、生涯に渡りパートナーとの良好な関係を築くために必要な心構えでしょう。
気持ちが前向きに慣れない時にはノーと言っていいこと、言われた側もノーと言われたことを受け止めること、そしてノーと言われたからといってその人自身を拒絶されたわけではないと知っておくことなどは、セックスに限らず人とのコミュニケーションの上で非常に大切なことです。
自分の体を大切にするということ
そして心を大切するのと同じくらい大切なのが、体を大切にすること。
避妊をしなければ妊娠リスクは避けられず、本来幸せなことであるはずの妊娠でも、子どもを育てる準備のできていない子どもたちの場合、大変な事態を招いてしまいかねませんね。
そのために、行為をする際には必ずコンドームを着用すること、コンドーム以外にも低用量ピルや子宮内避妊薬など様々な選択肢があることをきちんと伝えてあげましょう。仮に避妊に失敗した場合でも、緊急避妊薬(アフターピル)といった選択肢もあること、ゆえに、何かあった場合は子どもたちだけでどうにかしようとせず、大人に相談する必要性も併せて伝えてあげたいですね。
もう一つ、コンドームを使用せずに性交渉をもった場合、言わずもがな性感染症のリスクも伴います。性感染症は女性の生殖機能、男性の生殖機能どちらにも影響を及ぼすもので、将来的な妊娠の可能性に関わってくるものです。
近年マッチングアプリの普及もあり、数年前から梅毒患者の罹患者数が増えているというニュースはみなさんきっとご存じでしょう。SNSに加えマッチングアプリが普及し、それらが当たり前に使われるようになった時代だからこそ、性感染症のリスクを正しく理解し、コンドームを着用する習慣を持つべきではないでしょうか。
そしてもう一つ、異性のパートナーを持つ場合、体の作りの違いを理解しておくことも大切でしょう。特に女性の体は、月に一度月経があります。
月経の期間はそうではない時に比べて、精神的にも身体的にも非常にデリケートです。
男の子に話してもわからないだろうと決めつけてしまわず、月経が何のためにあり、女の子の体の中でどういうことが起こっているのか、女の子特有の辛さなど、できる限り簡潔に、そして丁寧に説明してあげましょう。
女性がひと月の中で調子良く過ごせる時期は、実はたった一週間しかないこと、ご存じでしたか?それ以外の期間は、ホルモンの変化による何かしらの小さな不調と付き合いながら過ごしているのです。そういったことを知っているのと、全く知らないのとでは、相手との付き合い方も変わってくるでしょう。
自分の体を大切にするということ
性欲は自然に湧き上がる感情であり、決していやらしいものではないこと、そして、セックスについて正しく知ることは、長い人生においてパートナーとの対等で、愛のある付き合い方をしていく上で、ものすごく重要なことです。
これまでの日本の性教育が「セックス」について蓋をしてきたことで、思わぬ性暴力を招いたり、性被害者を生んでしまったり、性に対するマイナスイメージが積み上げられてきているように感じます。
しかし、親や身近な大人が性について、セックスについて正しく伝えてあげれば、そんな状況は少しずつでも変わっていくのではないでしょうか。大人が恥ずかしがらず、堂々と、真剣に伝える。そして根気強く性の話題に向き合い続けましょう。自分を大切に、相手を大切にし、豊かな人生を歩んでいきたいものですね。
■参考ウェブサイト
PILCON
性の知識と人権尊重に基づく情報発信を行なっているNPO法人の情報サイト。https://pilcon.org/
著者プロフィール
柏木春香(かしわぎはるか)
AMPP(フランス植物療法普及医学協会)認定メディカルフィトテラピスト
福岡生まれ。産後の不調を機に漢方やハーブの素晴らしさを知り、植物療法の世界に入る。現在は植物療法コンサルテーションやハーブのブレンドを行うかたわら、SNSを通じて植物療法のこと、健康やセクシュアリティの大切さを伝えている。instagram:mul.phyto